2015年の来日ツアーから早4年。再びMatmosとJeff Careyのダブル来日ツアーが決定した。
前回のSOUP公演同様に出演がMatmosとJeff CareyのみのGinza Sony Parkの公演を選択。なんとこの日はチャージフリーのイベントだった。
[1]Jeff Carey飛行機の操縦席のような独特の機材とストロボライトを使ったライブ。操縦席と体が一緒に動いていく肉体的なパフォーマンス。一聴するとノイズだが、割と音の粒々がはっきりしていてインダストリアルテクノと中間のような音だった。15分程の演奏。
[2]Matmos毎回異なるコンセプトで作品を作り、そのたびにライブの形態も変わるというMatmos。今回はプラスチックをテーマにした最新作『Plastic Anniversary』の収録曲を披露するプラスティックライブセット。実際に使用されたプラスティックのマテリアルをどのように鳴らしてサンプリングしたのかという実演も盛り込まれたパフォーマンスだった。前回同様1曲ずつの演奏で、曲間はアメリカンジョーキング炸裂でこれでもかと笑かせてくれた。
(1)Thermoplastic Riot Shield 警察がデモを圧するときに使用されるライオット・シールドから発生させて音で作った曲。シールドを面をスクラッチした音、シールドをゴンゴンと叩く音が曲に混ざっている。シールド擦る音はハーシュノイズに聴こえ、叩く音はインダストリアルビートに聴こえ、おそらく全編を通して一番テクノっぽい曲。スクリーンには機動隊員が向かい合わせでライオット・シールドを擦りあう場面から始まり、暴動の場面、動員される機動隊員の場面が映し出され、最後は髭面の男がシールドに唇を押し付ける気持ちの悪い映像で締めくくる。
(2)Silicone Gel Implantシュミットが2種類のプラスティックの収納BOXをパーカッションに見立てて演奏する曲。手やブラシを使い、曲に合わせてリズミカルに叩いていく。軽量な収納BOXからはパコパコと小気味の良い音がした。
(3)The Crying Pill 子供の頃はピルが何を意味するのかわからなかった、二つのバナナが合わさったものだと思っていたとシュミット談。青くて大きいピルカプセルの模型をカポ、カポ、と取り外ししたり、合わせた状態でキュ、キュッと擦ったり、コツ、コツと叩いたりして色々な音を出す。それが少しずつルーピングされ、徐々にリズミカルになっていくとファンファーレのような音が響きだして演奏になっていく。ちなみに、このファンファーレのような音もカプセルを擦り合わせた音を音階のように組み合わせて奏でている模様。
(4)TC-11ここで「キーボードを弾く。」とシュミット。赤いRoland V-SynthVersion2.0をフィーチャーした曲。ジャジーな雰囲気で華麗に弾きまくる。ドリューもタッチパネル式のシンセで合わせていく。それは2台のエレピによるジャズセッションで全体を見通すと一番オーソドックスな演奏だった。
(5)Breaking Breadニコニコしながらレコードを見せるシュミット。すると、突如そのレコードを目の前で叩き割る。突然の行為にどよめく観客。レコードが叩き割れた音とそれにどよめく観客の声はいつのまにか録音・ルーピングされて曲が始まる。シュミットは割れたレコードの破片をビヨン、ビヨンと弾くように音を出す。それまるで低音の効いたウッドベースのようだ。ちょっとアイヌの民族楽器、ムックイの音色にも似ている。その破片ベースソロに合わせていつの間にか愉快なジャムセッションが繰り広げられていった。
(6)Plastisphere大小様々なビニール袋をいくつも変えてはマイクの前でクシャクシャとする。静けさの中で鳴るのは水の音とビニールの音、ゴーというゴミ処理場の重機のような音のみという他と比べて環境音楽の要素が強い。映像には海に浮かぶ大量のビニールのゴミ。どうやらプラスティック製品ゴミを減らすことが提唱された「海洋プラスティック憲章」にアメリカが署名しなかったことをシニカルに批判しているらしい。ファニーで畳み掛けといて最後はシリアスに着地するという前回同様の締めくくりであった。
Matmosはセットリストが総入れ替えで前回とは全く違うものが観れ、Jeff Careyも相変わらず面白く今回も大満足の来日公演だった。
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